タバコの有害物質は寿命を10年縮め、肺がんや口腔癌、心筋梗塞、脳梗塞など恐ろしい病気のリスクも高まります。

タバコ1本で寿命が14分縮む

ドクターストップ タバコを吸うと10年寿命が縮まると言われています。

これはタバコに含まれる200種類を超える有害物質の影響で生活習慣のバランスが崩れ、心身ともに様々な病気を引き起こすためです。

もし1日1箱(20本)、50年間毎日吸い続けると、20本×365日×50年間=365,000となります。
10年は5,256,000分に換算できますので、5,256,000分÷365,000本=14.4分 で1本タバコを吸うごとに、14.4分寿命が短くなります。
これが1箱20本のタバコを吸うと、1日で約5時間、寿命が短くなる計算になります。

喫煙を続けると10年寿命が縮むというのは、「ブリティッシュメディカルジャーナル」に載せられたレポートにより周知されるようになりました。
20歳から喫煙を開始した人の場合、余命が非喫煙者に比べ、男性は8年、女性は10年縮みます。
成人してからタバコを吸い続けると、男女共に50代にさしかかってくる頃から生存率がどんどん下がっていきます。

この研究の概要は、1900年から1930年に生まれたイギリスの男性医師ら(喫煙歴有り無し両方)を35歳から50年に渡って追跡したというものです。

イギリスの研究 それらのデータをまとめたものが右のグラフになります。
縦軸は35歳を100%とした生存率で、横軸は年齢です。
70歳の時の生存率は、非喫煙者が81%なのに対し喫煙者は58%ととても低くなっています。
また、喫煙者と非喫煙者の生存率の乖離(非喫煙者が喫煙者と同じ生存率になる年齢)が10年となっています。
ここから「タバコを吸うと10年寿命が縮む」と言われるようになりました。
(参考:Mortality in relation to smoking: 50 years’ observations on male British doctors

日本の研究 この研究はイギリス人でのデータでしたが、日本でも同様の追跡調査が行われています。
日本では1920年から1945年の間に生まれた男女を追跡、2012年に論文が発表されました。

右の図から分かるように、男性で8年、女性で10年寿命が短くなるという結果が出ています。

(参考:Impact of smoking on mortality and life expectancy in Japanese smokers

タバコを吸うと健康でいられる期間もかなり短くなる

ヘビースモーカー タバコは寿命を縮めるだけではありません。
健康でいられる期間、健康寿命に大きく関わる平均自立期間と呼ばれるものも同時に短くなっていきます。

平均自立期間とは、介護の必要がなく自分の力で日常生活を送れる期間を指します。

タバコを吸うと、有害物質のせいで血管は萎縮し酸欠状態になるため、代謝が悪くなり肌や髪がボロボロになり、内臓も衰え、非喫煙者より10倍もの速さで老化を促します。
寝つきも悪くなって疲れは溜まる一方、全身に酸素が行き渡らなくなるので脳の働きも格段に落ち、仕事の効率も下がります。
さらにニコチン依存からニコチン切れになるとイライラしたり不安に陥ったりと、精神的にも悪影響があります。
こうなると、当然ながら健康状態は悪化し、肺がんや脳梗塞などの様々な重病にかかるリスクが高くなります。

喫煙者の場合ですと、非喫煙者と比べてこの平均自立期間が約4.2年ほど短くなるという研究結果も出ています。

もし重病にかかって治せたとしても、介護がなければ生活できない状態に、自分が思うよりずっと早くなってしまうかもしれません。
医学の進歩により平均寿命は延びて病気も治るようになってきましたが、発がん性物質の入ったタバコという有害物質を自分から取り込んでしまっては意味がありません。

様々な禁煙治療薬や禁煙グッズが開発され、さらにニコチンを使わないチャンピックスの登場で、禁煙成功確率はかなり高まりました。
喫煙の一時的な満足と引き換えに呼吸が浅く全身が冷えて動かない状態になるより、禁煙するメリットを選んで自分の体で毎日気楽に過ごせる方が良いのではないでしょうか。

タバコによって引き起こされる病気

ドクターストップ タバコには発がん性物質も多く含む有害物質が200〜300種類も入っています。
当然、煙を吸うことで有害物質もあますことなく体内に取り込むことになります。

その結果、肺がんや口腔がん、食道がん、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などの命に関わる病気にかかってしまい寿命を縮めることになります。
タバコが原因で発祥する病気は、全身でかからない場所が無いと言っても良いほど様々にあります。

その中でも代表的なのが、肺がんや口腔がん、食道がんなどの癌や、心臓や血管の疾患である心筋梗塞や脳卒中です。
タバコの有害物質のため、喫煙者は癌や心血管系の病気の危険がかなり高くなります。
どれも簡単に治るものではありませんし、死に直結する重い病ばかりです。

肺がん

胸が痛い 肺がんは肺の気管や気管支などに発症する癌です。

呼吸によって肺に吸い込まれた空気を濾過してガス交換をする働きを持つ肺は、吸い込んだタバコの煙の有毒物質に一番さらされ易い臓器です。
発見が遅れることが多く致死性が非常に高い病気ですが、進行が進むと呼吸器系の障害も大きくなるため、とても苦しい最期を迎えるとも言われています。

主流煙でもかかる確率はかなり高くなりますが、それ以上に副流煙による受動喫煙で、タバコを吸わない人にも被害が及ぶことも少なくありません。
自分が吸っていなくても周りの誰かが吸うことで肺がんになる可能性が20〜30%上がるといわれています。

癌は全身に転移する恐ろしい病気ですが、様々な癌の中でも肺がんは、今の日本人のかかる癌の部位別死亡率No.1になっています。
その肺がんは、喫煙によって発症リスクが4〜5倍も高まることが分かっています。
肺がん患者の内、男性の70%、女性の20%がタバコが原因になっています。発症率の高さを見ると、タバコを吸っていなければ、肺がんにはなっていなかったかもしれませんね。

心筋梗塞

危険 心筋梗塞は心臓の細胞に栄養が行き渡らなくなり、細胞が壊死してしまう循環器系の病気です。

タバコの活性酸素とニコチンは、この心筋梗塞を起こす確率を非常に高くしてしまいます。
煙の中に含まれた活性酸素が血管の内側を傷つけてしまいますので、吸い続けているとダメージが蓄積して最終的に動脈硬化を引き起こします。
これが、全身に血液を送り出す臓器である心臓に起こった場合、血栓により心臓にも全身にも血液が送られなくなってしまいますので細胞が死んでしまいます。

さらにニコチンには血圧を上昇させる効果があります。
血圧が高い状態が続くと、血管の負担が増え徐々に圧力によって血管の壁が脆くなっていきます。そのため、動脈硬化をより促進させることにもなりかねません。

脳卒中

脳の異常 脳卒中は脳の血管の病気の総称で、主に以下の3つが知られています。
急性心筋梗塞と同じように、活性酸素による動脈硬化ニコチンによる高血圧が主な原因になります。
脳内やくも膜下の血管の動脈硬化が進むことで血管がもろくなり、血管が破裂すれば脳内出血やくも膜下出血が起こります。
また、動脈硬化から血栓が発生して脳内の血管で詰まれば、脳梗塞を起こします。

・くも膜下出血
脳は複数の膜で覆われていますが、その内の一つがくも膜と呼ばれています。
くも膜下出血は、くも膜と脳の間にある空間に張り巡らされた血管が出血した状態を指します。

・脳出血
脳内へ伸びる血管が出血した状態を指します。

・脳梗塞
脳内の血管が血栓により詰まり、脳へ血液や酸素が送れなくなった状態です。

高血圧

血圧 タバコの煙に含まれる有害物質ニコチンは、一時的に血圧を上げる働きがあります。
さらに同じ煙に含まれる一酸化炭素は血液中の酸素を不足させ、体内を慢性的に酸欠状態にさせます。

このためタバコは血圧を上昇させ、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病の原因になる動脈硬化を招きます。

またニコチンは副腎に刺激を与えて血圧を上げホルモンを分泌させる作用もあり、副腎疲労を招く要因にもなります。
喫煙を続けることでホルモンを常に分泌させる副腎は疲労がたまり、朝起きられなくなったり無気力状態、倦怠感などを引き起こします。本来は血圧や血統、水分、塩分量など体内環境のバランスを保つホルモンを分泌する副腎が、タバコの煙の悪影響でうまく働けなくなってしまうのです。

交感神経にも作用してバランスを崩れさせてしまうことも、血圧を上げる原因となっています。
血管がボロボロになり高血圧がひどくなると、突然死のリスクも通常の4倍に跳ね上がります。

ちなみにタバコ1本で上がる血圧は大体10〜20mmHgほどで、上がった血圧は15分ほど保持されます。1日に吸うタバコの本数が増えるほど血圧は上がりますから、元々血圧の高い人には喫煙が相当な負担になります。

低血圧の人が喫煙した場合、血圧が上がって健康になるかというと決してそんなことはありません。
血圧が低いということは元々、体内の血液が足りず酸素の循環もうまくいってない、栄養素が体に行き届いておらず老廃物が排出されずに残っている不健康な状態です。
そこに、さらに血液循環を悪くし酸欠状態を促進するタバコの煙を入れてもますます悪化するだけです。

特にどこも悪くしていない健康な人にとってさえ、タバコの煙は害の大きいものです。
何らかの病気を治療していたり高血圧、低血圧の人にとっては致命的な病を招く可能性が高くなりますのでご注意ください。

喘息

咳 タバコの煙は気道の内側に炎症を起こします。炎症を起こすと気道が狭くなりますので、空気も通りにくくなります。 喘息を発症していなくても喫煙者が息苦しく感じるのはこのためです。

喘息は気道に炎症を起こす病気ですので、その状態で喫煙を続ければ気道の炎症は一層悪化します。

またタバコを吸うことで全身の免疫系が活性化するため、抗原=タバコの煙を吸い込んだときのアレルギー反応も強く出るようになります。
加えて煙が気道過敏性を助長するため、喘息発作が起こりやすくなるのです。

さらに喘息は酷くすると気道がボロボロになり、息ができずに死亡することがあります。
喘息死で亡くなる人は年間約8,000人ほどに上ります。
喫煙者の場合、喘息を発症+発作による死亡率は非喫煙者の2倍という統計も出ています。

タバコを吸わない子供の喘息発症要因もタバコの受動喫煙によるものが大部分です。
大人も子供も、傷ついた気道は治療して原因を取り除いたとしても完全に治ることはありません。時には発作を起こして突然死してしまう危険性もあるのです。

糖尿病

ぜんざい タバコを25年間、毎日20本吸い続けた人は非喫煙者の約2倍も糖尿病になるリスクが高まります。
糖尿病自体が加齢と共にかかる人の多い病気ですので、かかりやすくなることの危険性はお分かりいただけるでしょう。

糖尿病は、血液中のブドウ糖が多くなりすぎる病気です。
糖尿病が悪化すると動脈硬化になり、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症を引き起こす危険が高いのです。

タバコの煙は赤血球の量を増やして血液をドロドロにします。さらにタバコのニコチンは血小板の粘度を上げて血液の流れを悪くさせます。
筋肉を収縮させ血管を細くしてしまうことも、より血液の流れを悪くさせる働きがあります。

加えてタバコを吸うことでブドウ糖をコントロールする役目のインスリンが働かなくなるため、糖尿病発症のリスクが高まります。
喫煙すると非喫煙者に比べてブドウ糖の処理機能が45%低下することが分かってきました。
臓器の栄養となるブドウ糖が十分にまわらなくなることで、処理されるはずの血糖が高いままになり全身に色々な悪影響をおよぼします。

糖尿病は合併症である糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの進行も早めます。それ以外でも、手足が壊死を起こして切断するしかない恐ろしい症状が出ることもあります。

胃潰瘍

腹痛 喫煙は胃の血流を低下させて粘膜の強さを下げることから、消化性潰瘍の一つである胃潰瘍の大きな原因になります。
タバコを吸う人と吸わない人の発症率は大体3,4倍も違いが出ているそうです。

タバコの煙は胃の運動を活性化させる反面で胃酸の分泌量を増やします。
かといってタバコの一酸化炭素やニコチンのせいで全身が酸欠状態による免疫力低下を起こして粘膜の防御力を下げますので、吸えば吸うほど胃に負担がかかっていきます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は早期発見と治療をおこなえば命に関わる病気ではありません。
しかし発見が遅れたり、胃潰瘍の原因を自分から作って再発を繰り返している場合は、胃の粘膜を突き抜けて重大な事態に陥ります。大量出血は確実ですし、手術をして胃の傷ついた部分を切除するしかありません。
最悪の場合、胃を丸ごと切除しなければいけないこともあります。

また酒を飲むとタバコが吸いたくなる人も注意が必要です。タバコの有毒物質にアルコールが加わると、胃潰瘍の発症率はさらに上昇することが分かっています。

禁煙に成功して胃潰瘍の再発率が16%まで低下したという統計もありますので、胃潰瘍の再発を防ぐためにもタバコを止めることをオススメします。

タバコに含まれる三大有害物質

タバコの吸殻 タバコの煙に含まれる有害物質は200〜300種類もあり、その中でも特に知られているのが依存性の強いニコチン、発がん性物質を多く含むタール、酸欠状態を引き起こす一酸化炭素です。
これ以外にも50種類以上の発がん性物質が含まれていて、肺がんや咽頭がん、食道がんなど全身に様々な癌を引き起こす原因になるリスクを持っています。

病気にならなくても、タバコを吸うと寿命は10年縮むと言われています。
そうでなくても喫煙すると、肌のハリや色合いは悪くなりくすみやシワが目立ちスモーカーズフェイスというニコチン依存者特有の顔や体質にかわっていきますので、実年齢よりもずっと老けてみられるようになります。
また癌やそれ以外の大病を患わなくても、脳卒中や認知症、骨粗しょう症、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患など、タバコが大きな原因になる疾患の危険性がとても高まります。

麻薬より依存性の強いニコチン

毒 ニコチンは、文字通りニコチン依存を引き起こす依存性・中毒性、即効性の極めて強い神経毒です。
喫煙することで即座に脳に到達、中枢神経系に作用し覚醒作用や鎮静作用を持ちますが、その依存性の強さから「タバコを吸わないとイライラしたり落ち着きが無くなる。集中力がなくなる。」「タバコ以外でのストレス発散ができなくなる」などの禁断症状の原因にもなります。
回数を重ねるごとに依存性も高まるため、吸う本数が次第にエスカレートしていくこともニコチンが原因なるためです。

さらに肺にまわったニコチンは即座に全身に広がり血管収縮させる働きもありますので、全身の代謝や免疫機能を低下させる悪影響もあります。
またニコチン自体に発がん性はありませんが、代謝物であるニトロソアミンに発がん性があることが分かっています。

ニコチンの依存性の強さはコカインやヘロインなどの麻薬以上と言われていて、ほとんどの生物に毒性を持つため殺虫剤の材料としても利用されています。

タールには数百種類もの発がん性物質が含まれる

タール タールは乾留液とも言い、有機物質が熱分解してできる粘性のある黒や褐色をした液体を指します。タバコのフィルターや歯に付着して茶色に変色し、いわゆる「ヤニ」とも呼ばれます。
タバコ以外でのタールは石炭からコークスを作る際に副産物としてできるもので、石油や泥炭などからも作り出されます。当然、体に良い作用を与えることはありません。

タールは数百種類におよぶ有害物質の集合体ですが、その中にはグループA発がん性物質(癌の原因になることが十分に証明された発がん性物質)と分類される発がん性物質も多量に含まれます。
粘性のあるタールはノドや肺によくくっつきますので、肺がんや咽頭がん、喉頭がんの原因にもなります。

癌以外でも、タールが喉や気管支に長く張り付いているとその器官の働きが悪くなります。慢性化して悪化していくと、気管支炎や喘息、呼吸困難など様々な症状を招きます。
またタバコの独特の臭いの原因になるのもタールです。

深刻な酸欠状態を引き起こす一酸化炭素

大気汚染 一酸化炭素は酸素の200から250倍の結合能力を持ちますので、血液の中にある酸素を運ぶヘモグロビンと結合することで、体と脳の両方に酸欠状態を引き起こします。
喫煙していると息切れが起こりやすくなるのはそのためですが、一酸化炭素が全身の酸素の供給を阻害することで、運動能力も脳の働きも低下させる悪影響があります。

この一酸化炭素は少量でも酸欠状態を起こします。しかも一度酸欠状態になると、3、4時間は同じ状態が続くため、頻繁に喫煙すれば酸欠状態はどんどんひどくなっていくのです。
体が酸欠状態になると、手足が冷え体温は下がり、免疫機能も低下、筋力や血管、内臓も衰えていきます。脳にもダメージは大きく、十分な酸素が行き渡らないことで集中力や記憶力、思考力、判断力の低下を招きます。

これが慢性化すると、血管内の赤血球の量が異常に増えてしまい、血液がドロドロになって頭痛や血圧異常などを引き起こします。
さらに動脈硬化の原因にもなりますので、脳梗塞や心筋梗塞など様々な症状の原因にもつながります。

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